軍隊の行進3:膠着時、故に士気を求む
夢を持ち、夢を語ること。それは彼らにとって心の支えでもあった。
全滅したアグリスト教団の奮戦により脱出に成功したハッティの生き残りの子孫達。彼らは自らを海の民と名乗り、バルカムット帝国に対してゲリラ戦を展開し、唯一その侵攻を食い止めることに成功した集団でもあった。しかし、彼らが侵攻を食い止められたのはいくつもの幸運が重なったからに過ぎない。
一つは、指揮をとったモーゼが、それ以上の戦果を求めず、また海に浮かないアンデッドでの物量作戦は不可能と判断したため。
一つは、巨大すぎる国を維持するには人材が足りず、これ以上の戦線拡大は不毛と言う決定が下されたため。
一つは、モーゼの後に指揮を取ったヤミが、戦力拡大よりも実験を好んだため。
そして最後に、そもそも海の民を攻める気が無かったためである。
陸の上へあがるのを拒み、あまり余計な攻撃をさせないよう、けん制で海戦を行う程度にとどめるよう指示されており、バルカムット側からは予定調和でもあった。そのことは海の民自身も自覚をしていたが、彼らは自分たちを鼓舞するために、唯一侵攻を食い止めたのだと言い聞かせ、それを誇りに口にした。
自らを鼓舞するために口にした言葉は、他国に対しても影響を与え、バルカムット帝国がそれ以上領土を拡大できないのは、海の民に苦戦しているからだという印象を植え付けた。
膠着。それ故に求めた士気が波及し、彼らの語った夢は現実のものへと変わっていった。
2015/10/19
1本(約1分)
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