自分の血統について知ってはいたもののそれまでまったく無自覚だった主人公は、ある時ふとしたきっかけで、父親から受け継いだ淫魔の血に目覚める。
文字数は約16,000文字。
「お前は淫魔の血を引いている」
「知ってるよ」
長期休暇で久しぶりに帰ってきた父の言葉に、僕は何を今さらというように肩をすくめた。
そんなことは、目の前の父親の姿を見てれば嫌でもわかる。
「お前も大きくなった。もう間もなく、否応なしに知ることになるだろう。自分が何者かをな」
「何だよ。僕が淫魔の性に目覚めて、父さんみたいに女を虜にして侍らせるようになるとでも言うのかい?」
僕の母親も、そんな女の一人なのだ。
普段は僕や妹の面倒をよく見てくれる優しい母だが、父が目の前にいるときは別だ。
完全に父のことしか目に入らない様子で、べったりとくっついていて、父からそうするように言われない限りは僕らの方には見向きもしない。
父と同じで異様に若いのは、淫魔の精をその胎に受けて、魔の眷属になったからだと聞いている。
「どう生きるかは、お前次第だ。ただ、己の血からは逃れられんよ」
父はそれだけを言うと、踵を返して部屋を出て行った。
・
・
・
「ねえ、兄貴」
妹が後ろ手に扉を閉めて、近づいてくる。
「ん?」
「えへへ、あのさあ……」
彼女は少し恥ずかしそうな顔をしながら、僕の隣まで来ると腰かけた。
「キス、したいんだけど」
「……へっ?」
唐突なお願いに、僕は目を瞬かせた。
「い、いや。急に何言ってんだ」
「だってさ。あたしたちって、兄妹じゃない?」
「……わけがわからん。兄妹は、普通はキスしないだろ」
「でも、お父さんたちはよくやってるよ?」
「何言ってるんだ。父さんと母さんとは夫婦じゃないか」
僕は困惑しながらそう言ったが、愛彩は小さく首を傾げると、くすりと笑った。
「兄貴は知らないの? お母さんが、元々はお父さんの、双子のお姉さんだったんだってこと」
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