田舎の静かな町に住む彼女は、穏やかな暮らしの中でただひとつだけ強く願っていることがあった。それは子どもを授かること。
結婚して数年、夫とは仲が良く、日常のやりとりも温かい。しかし、まだ子どもには恵まれていなかった。田舎では結婚するとすぐに子どもを期待される風潮があり、周囲からの何気ない「そろそろ?」という言葉が、彼女の心に小さな棘のように刺さる。
「私も早く赤ちゃんがほしい…」
彼女の思いは日を追うごとに強くなっていった。基礎体温を測り、妊娠しやすいタイミングを計り、食生活にも気を配る。それでもなかなか授からない。
焦りと不安が募る中で、夫との時間はより大切なものになっていった。夫も彼女の気持ちを理解しており、「大丈夫、きっとできるよ」と励ましてくれる。夜の営みも自然と増えた。妊活のためという目的があったとはいえ、彼女自身、夫の肌に触れるたびに安心し、満たされる感覚を覚えた。
しかし、それでも足りなかった。
彼女はただ子どもが欲しいだけではなかった。夫との時間そのものに強く惹かれ、何度でも求めたくなってしまう。身体の奥底から湧き上がる衝動を抑えきれず、夜が来るたびに夫の隣へ寄り添い、その温もりを求めた。
「ねぇ、今夜も…」
最初は控えめに誘っていた彼女だったが、次第にその欲求は抑えきれなくなり、夫を求める回数も増えていった。
「最近、すごいね…」
ある夜、夫が少し照れくさそうに言った。彼女は恥ずかしさを感じながらも、素直に「だって、あなたが好きだから」と囁く。それは嘘ではなかった。夫とひとつになることで、心の渇きが潤され、愛情がより深まる気がするのだ。
それでも、まだ足りない。
妊活は単なる義務ではなくなり、彼女にとっては日々の喜びとなった。夫の腕の中で感じる幸福感が、彼女をより貪欲にさせた。
「もっと…あなたを感じたい」
その言葉に夫は優しく微笑み、そっと彼女を抱き寄せる。
彼女にとって夜は、ただの営みではなく、夫と共に過ごす大切な時間。そして、赤ちゃんを迎えるための大切な一歩。毎晩夫を求める彼女の姿は、貪欲とも言えるほどだったが、それは愛ゆえの行為だった。
子どもを望む気持ちと、愛する人を求める気持ち。その二つが混ざり合い、彼女の生活を満たしていた。
そして、ある朝。
彼女はそっと妊娠検査薬を手にし、結果を確認する。
「…!」
そこには、待ち望んだ陽性のサインがあった。
彼女は静かに涙をこぼし、夫の元へ駆け寄る。
「…できたよ」
夫の腕の中で、彼女はこれまでの不安や焦り、そして満たされなかった渇きを思い出す。しかし、それももう過去のものとなった。
これからは新しい命と共に、彼女の愛もさらに深まっていく。
そして今夜も、彼女は夫の隣で微笑みながら寄り添うのだった。
2025/03/26
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