夫に「女」として見られなくなり、乾ききった日常を送るピアノ講師・絵里香。彼女の心の隙間に入り込んだのは、音大を目指す年下の美青年・幸永だった。
二人きりのレッスン室で交わされる熱い視線。そして訪れた、夫の不在という名のゴング。 若く獰猛な欲望が、教師と生徒の境界線を容赦なく踏み越える。リビングが背徳の舞台と化すとき、彼女はもう、その甘美な沼から逃れられない――。
総字数 約11000字
※パッケージ画像のみAIを使用しています。
〈本文より〉
主婦の絵里香が自宅で開くピアノ教室は、彼女にとって唯一、社会と繋がるための細い糸だった。生徒たちの拙い指使いを直しながらも、その視線は決まって窓際の席に座る青年に吸い寄せられてしまう。幸永、音大を目指す彼は、他の生徒とは明らかに違う空気を纏っていた。 彼の指が鍵盤を滑るたび、絵里香の心は小さく波立つ。それは単なる教師が生徒に向ける期待だけではない。もっと生々しく、熱を帯びた感情だった。夫との間に会話がなくなって久しい。
〇
「夫が、一週間ほど出張で留守にするの」 レッスンの合間の何気ない世間話。その中で、絵里香がぽろりとそう口にしたのは、本当に些細な出来心だった。……だが、その言葉を聞いた幸永の瞳が、一瞬鋭く光を放ったのを、絵里香は見逃さなかった。まるで獲物を見つけた肉食獣のような、獰猛な光だった。 そして、夫が重いスーツケースを引いて家を出ていった、その翌日のレッスン。いつもと同じ曲を弾いているはずなのに、部屋の空気は張り詰めていた。
〇
「……っ!」 絵里香は息を呑んだ。顔を覆っていた手を思わず下ろし、目の前の光景に釘付けになる。 そこには、若さという生命力そのものを体現するかのような、赤黒く猛り立った肉棒が、傲然と天を衝いていた。……夫のそれは、長年の習慣と惰性の中で、ただ役割を果たすためだけに存在する、どこか疲れた、穏やかなものだった。だが、幸永のそれは違う。まるでそれ自体が意志を持っているかのように脈打ち、暴力的とも言えるほどの熱と太さで、絵里香の理性を威嚇している。
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