「故郷の森林公園にまつわる奇妙な体験談」
40代の会社員は、父親の急死で実家に戻り、葬儀後、子供時代に通った公園へ気晴らしに訪れた。そこには古くから噂があった。夏になると現れる「手漕ぎボートに乗りたがる女」、そして森の奥に「全裸で佇む女」。誰もが「狐の仕業だ」と笑うが、近づいた者は妙な目に遭うという。公園に着くと、20代の若い女がボート小屋前に立っていた。「乗せてくれませんか?」と寂しげに囁く。訳ありそうな雰囲気だったが、男は黙って舟に乗った。男が漕ぎ、女は無言。やがて上陸し、彼女が「森の奥へ行きませんか」と誘う。予定もないまま従うと、木々が深くなり、日差しが消え、静寂に包まれた。突然、女は服を脱ぎ捨て、全裸に。白い肌が薄暗い森で不自然に浮かぶ。その瞬間、男の頭がぼうっとし、理性が飛んだ。本能のまま、獣のように交わった。終わると、女は子供のようにはしゃぎ笑い、「満足した?」と言って木々の間へ駆け抜け、消えた。慌ててスマホを見たが圏外でナビは使えない。途方に暮れる中、ポケットの土産物キーホルダーからカチャリと音。キーホルダーに小さな磁石がついていたのを思い出した。磁石を頼りに南へ歩くと、やがて池の水面が光り、森を脱出できた。遠くで狐の鳴き声のようなものが聞こえた気がした。それ以来、男は「あの公園のボートには乗らない」と周囲に言いふらす。だが、最後にこう付け加える。「でもな……どうしても乗りたくなったら、必ず磁石を携帯しろよ。」
2026/03/07
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