二十二歳の私と、年上のデカ尻ナースである彼女。その「終わり」が最初から約束されているような、どこか刹那的な恋の物語は、彼女の父親が倒れたという一本の電話をきっかけに、予想もしなかった賑やかな方向へとハンドルを切ることになった。
快晴の土曜日、私は彼女を追って彼女の実家へと車を走らせた。国道をひた走り、山道に入れば右へ左へとハンドルを切る快感が指先に伝わる。ちょうどカーラジオから流れてきたのは、懐かしい「70年代の有名な夏のヒット曲」だった。爽快なメロディとは裏腹に、一時の過ちで愛を失う不倫を歌ったその歌詞は、初夏のドライブに奇妙な緊張感と一抹の不安を添える。駅で待ち合わせをすると、ちょうど今着いたばかりだというジーンズ姿の彼女が、まばゆい日差しの中に立っていた。二人の間に流れる不思議な縁を再確認しながら、BGMの重低音がソファを揺らす変わった喫茶店で昼食を済ませ、私たちは彼女の家族が待つ場所へと向かった。
しかし、そこで待ち受けていたのは、しっとりとした再会ムードを吹き飛ばすほどに凄絶で、それでいてどこか滑稽な一族の「情事」の数々だった。妹の旦那はトラック運転手だが、つい先日、浮気相手のキャバ嬢が包丁を持って家に殴り込んできて警察沙汰になったばかりだという。さらにお父さんの入院先では、お兄さんが若い看護師と意気投合し、たびたび外泊を繰り返しているというのだ。お兄さんの家で夕食のビールを馳走になりながら、まるでドラマや週刊誌を煮詰めたような人間模様に私は圧倒されるばかりだった。その夜は妹の家に泊めてもらい、当然のごとく二人きりの時間は「お預け」となった。
翌朝、両親への挨拶を済ませた私たちは、ようやく二人だけの空間である彼女のアパートへと車を走らせた。一週間の空白を埋めるように、部屋に着くなり私たちはベッドへと倒れ込み、激しく身体を重ねた。背後から彼女を抱きしめ、深く腰を沈めるたび、彼女の喘ぎ声はいつになく高く、大きく響き渡る。夜になっても情熱は収まらず、夕食のビールを空けて再び重なり合ったが、長距離運転の疲れがたまっていた私は、ついにフィニッシュへ辿り着くことができず、中途半端なまま泥のように眠りに落ちてしまった。
翌朝、彼女は潤んだ瞳で「昨夜は6回もいっちゃった」と、この上なく満足げに微笑んだ。私が果てていなかったという不都合な事実は、彼女の満足感を守るための「優しい嘘」として、私は胸の奥に仕舞い込んだ。身体の相性はこれ以上ないほど完璧で、一族の破天荒さもどこか愛おしい。けれど、私が大学を卒業すれば、この道が二手に分かれることをお互いに覚悟している。あの曲が歌うような関係かもしれない。それでも私たちは、終わりゆく予感から目を逸らすように、今はただ、この賑やかで熱い愛の続きを貪り合っている。
2026/06/08
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