「いいえ。あの子、まだ帰ってきてなくて……ほんとにごめんなさいね」
大学に入ってから、僕は家庭教師のアルバイトを始めた。
その派遣先『楠家』。
僕の担当する楠伸也の母親である彼女とも、すっかり顔なじみになっている。
人妻とは思えない、見事なプロポーション。
そして、立っているだけでも、こちらの視覚を占有して止まない、大きな乳房……。
だめだ。見つめていると、気持ちが変な方向へ行ってしまう。
「おい!」
いつの間に戻ったのか、蒔絵さんの息子の伸也が居た。
「だいたい母さん、なんでこんなのと仲良く茶なんて飲んでんだよ」
「あなたが早く帰ってこないのがいけないんでしょう? ほら、きちんと挨拶しなさい
「ちっ。……おら、早く行くぞ、クズ」
言うだけ言うと、伸也は勝手に自室へ行ってしまう。
「もうっ。……ごめんなさいね、あとできちんと叱っておきますから」
「い、いいんですよ。気にしてませんから」
とはいえ、そんな気持ちは一切顔には出さず、僕は伸也の部屋に向かい彼のご機嫌を取りながら勉強を教えることにした。
その夜
「……はぁ……蒔絵さん……エロかったなぁ」
正直、今のアルバイトはいろいろな意味でストレスだった。
蒔絵さんの豊満な体にムラムラするのと、あの生意気な息子のせいだ。
毎回、なぜか敵意むき出して僕を目の敵にする。単に勉強が嫌いという以上のものを感じていた。
「今すぐやめたいけど、そうなると蒔絵さんにあえなくなるしなぁ……」
「ん? なんだこれ」
日課のネットサーフィン中、何気なくマウスポインタが止まった先、そこにはこんなバナー広告があった。
――貴方の夜を一変させる、脅威のラブポーション――
普段ならそんなもの、笑って無視するところだけど、今日は違っていた。
クリックして、サイトへジャンプする。
そこに書かれていたのは、いかにも妖しげな文言たち。
「とても強力な薬です。一日一錠のみ服用ください……」
アオリ文句は良くある感じだったけど、効能書きはいちいち注意が多い。
「……もしかすると……これは」
これを使えば、蒔絵さんと……。
もちろん、そんなうまい話があるわけはない。
でも、どうせこのままじゃ悶々とする日々が続くんだ。
「よし、買ってやれ!」
僕は荒っぽくマウスをクリック、購入画面に必要な項目を入力して、薬を購入した。
「……さて、どうなる、かな」
なんだか、急に胸がドキドキしてきた。
ものすごく悪いことをしているような、それでいて気持ちが昂ぶってくるような。
媚薬、その素敵な響きが、僕を興奮させていた。
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