ベッドに横になりながらなかなか寝付けないでいると、小さな音を立てて部屋のドアが開いて誰かが入ってくる気配がした。
「……孝行ちゃん、起きてる?」
お母さんの声に布団の中で僅かにビクッと身体を震わせる。
やっぱり今日も来たんだ……。
「ねぇ、孝行ちゃんってば。眠っちゃったの?」
「……起きてるよ」
「良かった。ごめんね~、あの人ったらなかなか眠ってくれなくて」
僕の声を聞いて、お母さんが嬉しそうにしながら近寄ってくる。
その様子を横になったまま黙って見守っていると、お母さんが当然のようにベッドにあがってきた。
「ちょっと遅くなっちゃったけど、始めよっか」
どのくらい前のことだっただろうか。
「孝行ちゃん、この人がこの前話した宮坂重蔵さん。あなたのお父さんになってくれる人よ」
ある休みの日、家にやって来た男の人をお母さんが僕に紹介してきた。
お母さんよりもだいぶ年上の、どこにでもいそうなおじさんだった。
それが今いる僕のお義父さん。
紹介された時は正直意外だった。お母さんはお父さんのことを凄く愛していたから。
そしてそれはお父さんの死後も全然変わっていなかった。
だから再婚を決めたときは凄く驚いたのだった。でも同時に安心しもした。
よく悲しそうな顔をしていたから。
これでお母さんもそんな顔しなくなると。
幸せになると――。
「…………」
目を覚ますと、部屋にお母さんの姿はなかった。
身体の上にはしっかりと掛け布団が掛けられ、パジャマもちゃんと着ているみたいだ。
いつも通り、お母さんが乱れたのを直していってくれたのだろう。
「はぁ……」
また、昔の夢を見ちゃった。
今のお父さんと初めて会った日の夢。
あの頃はまだ、新しい家族と普通の生活を送っていけると思っていた。
お母さんも幸せになれると――。
でもそれは間違っていた。
お母さんは新しいお父さんのことを愛してなんかいなかった。
それどころか、死んだお父さんへの愛が歪んだ形で僕に向けられてしまう。
成長した僕を溺愛し、親子でセックスまでするという……。
確かにお母さんは前みたいに悲しそうな顔をしなくなったけど、今の僕達の関係は間違ったものだった。
こんなこと、いつまでも続けちゃいけない。
そのことに、お母さんだっていつかきっと気づいてくれるはずだ。
そう信じて、今はただ耐えているのだった。
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